日本口腔診断学会 理事長 伊藤 孝訓日本口腔診断学会
理事長 伊藤 孝訓

 平成29年度より日本口腔診断学会の5代目理事長を拝命し,はや4年が経ち,そして会員の皆様の支持をいただきまして,本年第3期目がスタートしました。この2年間は,COVID-19パンデミックによる日常生活の変化が大きく影響し,人流や行動が自粛され,学会活動も停滞を余儀なくされました。大会・総会もオンラインでの開催が増え,会議等もWebにより執り行われるようになりました。現地へ出向くことが制限され,演者との直接応答もなく,また会場や外での交流もありません。日常の大学での激務から離れ,他大学の先生方とコミュニケーションする楽しさも昔のような気がします。COVID-19が収束しても,このようなウィルスが原因となるパンデミックが再度流行する可能性が危惧されます。対面でのコミュニケーションをするにあたり,リスク管理がさらに増すことでしょう。しかし,以前のような人間特有の非合理的なコミュニケーションスタイルには戻れないものなのか,という僅かな期待を捨てさることがまだできません。
 私が,大学院を修了し助手になった年の昭和60年9月24日に,口腔診断学に関係ある大学人が神奈川歯科大学の赤松英一先生の呼びかけで,9大学10講座,48名が集まり発起会を開催しました。その後2回の研究会を経て,第1回日本口腔診断学会が昭和63年5月22日,日経ホールにおいて執り行われました。赤松英一初代理事長は,「どの診断の問題をとりあげても学問分野の統合なくしては語れない。心身の変化を多角的に診るためには総合的に討議する機関が必要である。こうした総合のひとつの形態として本学会の存在意義があるのではなかろうか。」と発会にあたり話しております。また,私どもの山野博可初代教授も「口腔診断学とは臨床の扇の要だ」と日頃から述べていました。口腔診断学は縦割りになりがちな歯科の学問体系を横断的に結びつける臨床歯科医学として,研究のみならず教育・臨床に必要不可欠な学問で,他の臨床専門科目とはフレーム(枠組み)の捉え方がやや異なった観点を有しています。この考えは研究よりも臨床において,包括的・全人的歯科アプローチとして,疾患のみならず心理社会的問題に対しても学際的な視点から患者を捉える学問としての価値が高いと思います。
 日本口腔診断学会は,発会当初より多様な専門分野の先生方が集結していますが,現在でも各大学の口腔診断学関連の会員はもとより,口腔外科学,口腔内科学,歯科保存学,歯科放射線学,口腔病理学などを専門とする会員,病院歯科・歯科医院に従事する会員等を併せて1,300名を超える学会組織です。今後も,様々な背景を持つ全ての会員が互いの立場を尊重し,よりよい雰囲気の中で,活躍できる環境を整えていきたいと考えています。
 歯学のアカデミアの一端を担い30数年の経過の中で,学会が求められる立ち位置は若干変化し,現在では,会員の構成も口腔外科・口腔内科系55%,診断系25%,放射線系10%,補綴・保存・矯正系5%となり,外科系学会員の割合が増えています。そのため,学会誌への投稿も外科系の症例報告がさらに増えました。症例報告については,本学会は発刊当初より多くの掲載を薦めています。その理由は中核となる診断推論や診査法について,総論だけでは理解がしにくいため,最適な学修法としては,「症例カンファレンス」があります。そのため,症例報告については診断学を基盤とした学びを意識して記載フォームを整え,紙面上で展開することで,会員がより理解しやすくすることで多くの症例を学べるのが本学会の特長です。
 また,平成20年の第21回大会より始まった日本口腔内科学会との合同開催は,多くの回数を重ねています。本学会と学問領域が近い学会については,積極的な合同開催を薦め,会員に対して相互に幅広い知識と技術の学びがしやすい環境をつくり,将来の歯科専門医の一端を担えるよう学会活動について検討を重ねています。また,本邦の歯科医療システムにおいて,国民の健康福祉の向上のためにも本会の特徴を理解していただき,存在意義が実現化するよう会を挙げて努力します。そのためには,学会会員の積極的な支援が不可欠だと思いますので,ご尽力いただけますようお願い申し上げます。
 (令和3年10月20日記)