日本口腔診断学会
理事長 野村 武史
令和5年度より日本口腔診断学会の6代目理事長を拝命いたしました東京歯科大学の野村武史でございます。
本学会の歴史は古く,昭和60年に口腔診断研究会が発足し,昭和63年には日本口腔診断学会に昇格,赤松栄一先生(神奈川歯科大学)が初代理事長となりました。二代目の理事長は黒﨑紀正先生(東京医科歯科大学歯学部),三代目は山根源之先生(東京歯科大学),四代目は笹野高嗣先生(東北大学歯学部),そして五代目理事長は伊藤孝訓先生(日本大学松戸歯学部)が学会を運営し発展してまいりました。学術大会は36回を数え,最近では日本口腔内科学会をはじめ多くの関連学会と共催しながら学術の交流を深めています。
初代理事長の赤松先生は,設立当時学会雑誌の冒頭に,「どの診断の問題をとりあげても学問分野の統合なくしては語れない。心身の変化を多角的に診るためには総合的に討議する機関が必要である。こうした総合のひとつの形態として本学会の存在意義があるのではなかろうか。」と述べています。これは歴代の理事長が引用している名言であり,後世まで伝えたい学会の存在意義であると考えています。
口腔診断学が魅力的であるのは,縦割りの歯科の学問体系を横断的に結びつける実学としての臨床歯科医学であることです。このことは本学会のアドバンテージであり,専門性を踏襲しながら横のつながりを大切にする,セクショナリズムを排除した自由おおらかな学会であるという点です。本学会の英語表記は,設立当初からoral diagnosis/oral medicineであります。診断であるdiagnosisと内科(医学)であるmedicine,今ほど高齢化が進んでいない当時から,全身と口腔のつながりを大切にし,全身疾患の口腔症状のみならず,口腔症状から全身を推察する診断応力の向上に努めてきた点です。この考え方は現在の歯科医学教育にも当てはまり,歯学教育の分野における診断学の重要性が再認識されています。
日本口腔診断学会は,発会当初より多様な専門分野の先生方が集結しています。歯科保存学,歯科補綴学,口腔外科学,口腔内科学,歯科放射線学,口腔病理学などを専門とする会員,病院歯科や歯科医院に従事する会員等を併せて1,200名を超える学会員で成り立っています。今後も,様々な背景を持つ全ての会員がお互いの立場を尊重し,よりよい雰囲気の中で,活躍できる環境を整えていくことが何より大切であると考えています。私は本学会の多くの先生がたに育てられてまいりました。これからも会員の皆様を大切にし,さらに発展させていきたいと考えています。どうか皆様のご協力を宜しくお願い申し上げます。
(令和5年10月24日記)