口腔診断学会認定研修カリキュラム(案)

研修目標

 口腔を一単位として治療するには,歯科の細分化された専門知識のひとつの治療技術で事足りることは少なく,多くの患者は複数の治療技術が必要となる。したがって,患者の望む口腔機能の回復を行うには,各種治療技術の特徴を知り順次選択施行し,患者個々のライフステージを考慮した決断評価の基となる学問(Oral Diagnosis)が歯科には必要である。また,我が国では超高齢化に伴い全身疾患を有する患者は増加し,全身を基軸とした学問(Oral Medicine)が歯科医学には必要である。これらの学問的基盤から歯科医学の専門知識,特に診断学について横断的に専門知識の統合を図り,国民の健康福祉の向上に貢献する知識・技能・態度を修得することを目標とする。
 

研修カリキュラム
研修のアウトカム(成果)

1.医療面接と口腔・顎・顔面領域の疾患の診断のための医療技能を修得する。
2.専門領域の歯科医師および医師からの要請に応じて適切な対応と指示とを行うことのできる能力を養成する。
3.医の倫理に配慮し,歯科医療の検査治療を行う上での適切な態度と習慣を身に付けている。
4.検査治療にあたって,患者に対しての説明責任を実施することができる。
5.口腔診断学の進歩に合わせた生涯学習を行うための方略を修得している。
 

研修の到達目標(取得すべき知識・技能・態度)

A.診断に必要な基本的知識
一般目標
患者に歯科診療を提供するために,歯科診断に必要な基本知識を修得する。
到達目標:
(1)顎口腔系の構造と機能を説明する。
(2)顎口腔系の異常とそれに伴う機能障害の病因と病態を説明する。
(3)身体のみでなく心理・社会的要因による患者背景を説明する。
(4)歯科診療に必要な機器・材料について説明する。
B.歯科診療の診断・治療に必要な診察・検査
一般目標:
口腔・顎顔面領域の診察,検査,診断を行うために,必要な診察・検査を選択し実施する。
到達目標:
(1)医療面接を行う。
(2)問題志向型診療記録(problem-oriented medical record <POMR>)を行う。
(3)口腔・顎顔面領域の診察を行う。
(4)必要な顎口腔機能検査を行う。
(5)必要な画像検査を行う。
(6)必要な臨床検査を行う。
(7)診療室における患者の心理と行動に配慮する。
(8)処方箋,技工指示書を記載する。
C.歯科診療の診断
一般目標:
患者個々に対応した歯科医療を行うために,検査・診断を行い,適切な治療方針を立案する。
到達目標:
(1)診断情報に基づいた診断推論・臨床推論を行う。
(2)検査情報の正常・異常を判断する。
(3)歯科治療の難易度を評価する
(4)EBMの根拠となる資料を検索する。
(5)全身的局所的問題点を抽出して基本的な治療計画を立案する。
(6)患者に関する医療情報を他の医療機関に対診する。
D.医療倫理,感染予防,個人情報管理,生涯学習
一般目標:
患者に安心安全な歯科医療を提供するために,医療倫理,感染予防,個人情報管理,生涯学習に配慮し実践する。
到達目標:
(1)医療安全に配慮する。
(2)医療倫理に配慮する。
(3)診療室の感染予防対策をする。
(4)個人情報保護に配慮する。
(5)学術大会・講習会等に参加する。
 

数値目標

1.診断(医療面接・診察・検査・治療方針・予後)・治療(歯科・口腔疾患・その他):いずれか30例以上,若しくは,治療を含まないものは90例以上(必須)
(1)患者の異常状態の把握(主訴,現病歴)
(2)異常状態の情報収集(診察・検査所見)
(3)収集した情報の解釈・診断(診断に至る過程)
(4)治療方針の選択・立案(治療方針とその根拠)
(5)予後の推定(予後の根拠)
(6)その他 医科的・家族的既往歴など
(7)治療
(8)経過観察
2.認定講習会の受講:2回以上(必須)・・・5年間で2学術大会の参加が必須
 学会・総会時に実施された認定講習会へ参加した場合は,証明できるもののコピーを提出する。
3.学会発表・論文:(必須)
  (1)学会発表 1回以上
  (2)論文   3編以上
  (1)(2)については筆頭発表者でなくてよい。重複も可とする。
 歯科医学に関する学会発表,論文を証明できるもののコピーを提出する。
4.その他:10回以上
 講習会への参加,活動等については,証明できるもののコピーを提出する。
(1)患者の人権・医の倫理
(2)社会と歯科医療
(3)予防と健康管理・増進
(4)医療安全
(5)感染対策
(6)歯科医師会活動
(7)FD活動
5.臨床教育の講師及び指導:1回以上
 歯科学生,研修歯科医,歯科衛生学生,新人教育等,何らかの教育に携わったシラバスや教育プログラムのコピーを提出する。
 

評価

1.認定医若しくは認定医となろうとするものは,研修カリキュラムの項目に従い,必要条件を満たさなければならない。
2.研修目標と方略により研修施設で適切な形成的評価(筆記試験,観察記録,研修手帳など)がなされなければならない。
3.認定医若しくは認定医となろうとするものは,研修カリキュラムの項目に従い規定数以上をまとめ,指導医に提出する。細目によってはコピーも添付する。
4.認定医を希望する者は,認定講習会,認定試験を受験すること。
5.認定研修機関は,認定委員会に研修カリキュラム細目を含む独自の履修票を提出する。
 
20180913